調査物語

2033年、3~4戸に1戸が空き家

総務省2018年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は現在848万9千戸で、過去最高を記録した。
総住宅戸数6240万7千戸の13.5%を占めており、7~8戸に1戸は誰も住んでいないことになる。一方、新築住宅着工戸数は毎年80万戸前後で推移している。これでは、ますます空き家が増え続けることになる。
野村総合研究所の調査(2018年)によれば2033年総住宅戸数は約7156万戸と増大し、空き家戸数は1955万戸で約27%まで上昇するという。要するに、全国の3~4戸に1戸が空き家になってしまう計算になる。

空き家といっても3つに分類される。1つは賃貸・分譲用に建てたが入居者がみつからない場合(別荘も含む)。
2つめは高齢者が今まで暮らした家から新しい家へ住み替える場合。3つめは単身高齢者が施設に入ったり死亡した場合。空き家にはマンションも少なくない。総務省の調査では2018年の空き家総戸数848万9千戸のうち、56%にあたる475万戸がマンションのようだ。マンションの場合1棟のうち半分しか入居していないマンションも珍しくない。こうなると物件価値も低下し、スラム化の道をたどることになり、周辺の環境も悪化する。

この空き家対策をどうすればいいのだろう。地域の安全・安心から自治体も対策にのり出しているが、政府も「空き室等対策特別措置法」を制定し、深刻な物件(持ち主が分からない場合)には、持ち主を探すための情報の活用ほか、立ち入り調査や建物の修繕や解体の勧告、命令などが実施できるようなテコ入れを図っている。もちろん、こうした目の前の課題への対応は重要だが、空き家問題を根本に解決して行くには、「なぜ増えたのか」という理由に立ち返る必要がある。

空き家が増える最大の要因は新築住宅の供給過剰だ。2018年をみても、総住宅戸数6,240万7千戸、総世帯数5400万1千世帯と総住宅戸数は総世帯数を約840万戸上回っている。この傾向は1968年の住宅・土地統計調査以降から変わらない。少子化で相続する子供が減った。相続人がいても、都会に出た若者が「田舎の家」には価値を見出せない。都会に出た若者が新たに家を購入するなどで、さらに空き家は増えて行くだろう。

リフォーム住宅需要が広がっているといっても、新築住宅の人気は根強く空き家が増える大きな理由である。
2021年度の新築住宅着工戸数は約86万戸で、全盛期に比べれば減少してきてはいるが、それでも100万戸に近い水準である。政府も、住宅ローンの控除など、新築住宅の開発を促す政策を推進してきた。住宅取得が進めば、家電製品や家具、車などの需要が伸びることから、わかりやすい「景気浮揚策」を行い、空き家対策が必要なことと分かっていながら、景気政策を優先せんがために目をつぶり、空き家対策どころか空き家数の増大に拍車をかけるような政策を講じてきたのである。これからは中古住宅市場の活性化を目指すところに大きなビジネスチャンスが存在する(2030年のリフォーム市場は6~7兆円)。中古住宅市場を活性化する為にも新たな優遇制度や住みやすい環境づくりを願うものである。
*「未来の年表」より抜粋

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