オフィスビルに「シェア休養室」

三菱地所は4月から、オフィスビルで従業員の休養室を企業間でシェアするサービスを始めた。
一定規模の企業に設置義務がある休養室の設備投資を抑えつつ、従業員の満足度を高める。不動産デベロッパーがオフィスビル内の福利厚生サービスを充実させ、ビルの付加価値を高める動きが広がっている。

4月の平日午後5時過ぎ、三菱地所が保有するオフィスビル(東京・千代田)1階の「シェア休養室」には、マッサージチェアや仮眠専用機器を利用する人の姿があった。この日訪れた創薬スタートアップのEXORPHIA(エクソーフィア)の女性社員は「週3~4回、夕方の疲れがたまった時間帯によく来る。業務時間内に使えて便利」と満足げだった。

三菱地所が始めたシェア休養室「とまり木」は、契約した企業の従業員が1日原則15分でマッサージや仮眠の専用機器を利用できる。有資格者のパーソナルトレーナーによる、ストレッチの個人指導も受けられる。体調不良の時はベッドで1時間を上限に休める。約10種類の健康グッズも自由に使え、商品購入も可能である。
大手町ビルのシェア休養室は紳士服ブランドが退去し空白になっていた区画を改装した。ビルに入居するテナント企業に加え、近隣の丸の内エリアにオフィスを構える企業も契約できる。契約企業は4月時点で20社を超えた。

利用料金は従業員50人未満で1社あたり月額5万円。50~100人では7万5000円、101~300人だと10万円になる。三菱地所が社員の利用状況などを企業に定期報告する。
休養室は従業員が全体で50人以上か、女性が30人以上いる企業には法的設置義務がある。ただ会議室やロッカールームに横になれる長椅子を置くといった対応にとどまる企業では思うように利用が進んでいない。
社内での利用申請もハードルになっていた。従業員が少ないスタートアップ企業などでは設置していない場合も多い。

エクソーフィアも義務の対象外だが、中途採用活動でシェア休養室を福利厚生の目玉として打ち出したところ、入社につながった例も出て来た。同社は「資金が限られてるスタートアップにとって低コストで導入できるのはありがたい」と語る。
シェア休養室は三菱地所グループの新事業提案制度で出て来たアイデアだ。約1年半の試験運用を経て本格導入した。延べ8000人の傾向をみると、昼休みや夕方の時間帯が多い。重要な会議前後に心身を落ち着かせたり、育児中の人が一息ついたりするといった利用方法があったという。

三菱地所では、災害などの有事には救護室として使うなど、ビルのインフラ機能にもなると強調する。2025年内にも丸の内や有楽町の保有オフィスビルで2ヵ所目を開設する方針。オフィスビルではテナント企業向けの福利厚生サービスを充実させ、物件の競争力を高める動きがある。三井不動産は入居企業の従業員専用のスポーツジムを設けたり、健康管理を支援するアプリを提供したりしている。 (日経MJ)

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