大工不足と建設業界

2025年も初夏を迎えようとしており、年月が経つ早さをつくづく感じます。
建設業界では人材不足の深刻さが取り沙汰されていますが、特に現場で作業を行う実務者の不足が早急に対応すべき課題となっており、前回は建設業界で働く外国人労働者について触れました。
今年は5年毎に実施される国勢調査の年であり、国勢調査で浮き彫りとなる職業別の人材の中で、「大工」に焦点を当て、その増減や動向を俯瞰したいと思います。

大工の人数は1980年をピークに軒並み減少

総務省が国勢調査の中で取り纏めている職業別人材数には「大工」の項目があり、その人材数の推移をグラフ化しました。

大工を職業として回答している人数は、1980年の937,000人をピークとして、減少の一途を辿っています。2000年には647,000人、2020年では298,000人となっており、この20年間で46%まで大幅に減少しました。 大工は一般的に木造住宅を得意とする建築系の作業員ですが、現場を仕切る役割も多く、大工の指示に沿って作業が進められます。現場を熟知した大工であれば、内・外装に留まらず、更に多くの職能を持ち、作業員全体を牽引する役割を担います。
大工の人数が減少しているのは、入職者数の少なさ=建築現場で働くのは大変、危険、その他の理由も含めて色々ありますが、問題視すべきは、その「高齢化」です。全体の298,000人のうち、43%の128,000人が60歳以上であり、今後も少子高齢化が進む事を鑑みれば、10年後は20万人を下回る水準になると予見します。

ここで一旦、「建設業の外国人労働者数(前回)」と比較します。

外国人の建設業労働者数は178,000人弱であり、土木も含めた広範な範囲で実務に従事している前提で言えば、大工の減少数だけをカバーするどころではなく、全く足りません。外国人労働者は離職率も高く、人員数を単年と5年毎の推移で比較する事自体に無理があり、大工の技術力や統率力といった属性も異なります。
このように大工不足やその他の人材不足に伴う賃金上昇や工期延長などが、結果的に「建築コスト高騰」の要因になっています。

これから建築物が建てられなくなる時代が来る?

建設業における人材不足については、先述の外国人労働者の拡大だけでなく、建設用ロボット/パワードスーツ開発の推進、ICT化促進による効率化、建設キャリアアップシステムといった制度面の改善も取り組まれています。建材についても、軽量化や施工性の向上が求められており、そのような開発テーマも多くなっています。しかしながら、それらはいずれも建設業の現場に携わる人材があっての話であり、それらの現場実務者の意見やニーズが非常に重要です。現状では、建築コストを上積みすれば建築物が建つ状況ですが、人手不足が更に深刻化したらどうなるでしょうか。これは社会問題に起因する内容でもあり、一朝一夕で解決出来る事ではありませんが、更にハイスピードで様々な解決策を提唱/実践し、トライ・エラーを繰り返し、恒久的な解決策を導き出す必要があります。

【担当:相馬義輝】  

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