東京都は2026年春、お台場に世界最大級の噴水を整備する。臨海副都心の新たなランドマークとする考えだが、20億円を超える建設費については賛否がわかれている。
背景には、東京都心部の再開発ラッシュに伴う臨海副都心の存在感低下がある。
巨大噴水は一帯が再び舞い上がるシンボルとなるだろうか。
「ODAIBAファウンテン」は2026年3月、お台場海浜公園(東京・港)に完成する。高さ150mの噴水と、都の花「ソメイヨシノ」をモチーフにした横幅250mの噴水を組み合わせる。完成後は午前11時から午後9時まで1日10回、レインボーブリッジや東京タワーを背景に噴水ショーを展開する。同公園の入園料は無料だ。
2025年4月に一般競争入札で建設業者を決めた。東洋建設が約24億円で落札。維持費は年1億5千万円~2億円を見込む。都は対岸も含めた観覧者数を年3千万人、経済普及効果を同98億円とはじいた。過去の花火イベントから観覧者数を算出し、観光客らによる経済効果を試算した。
都が整備に乗り出す背景には「臨海副都心の魅力低下」がある。来訪者数は2015年の5,680万人をピークに頭打ちとなり、新型コロナウィルス禍で減少。東京駅周辺や渋谷などで大型再開発が進むなか、臨海部の存在感は相対的に低下した。
臨海部は大半が埋め立て地で、都は「大家」の役割を担う。東京湾の埋め立ては昭和の高度成長期にゴミ処分で大きく広がり、現在も沖合へ拡大を続ける。埋め立てとインフラ整備を都が担い、費用は埋め立て地を民間に賃貸・分譲して賄う。
今回の噴水の建設費と維持費も、埋め立て地の賃貸・分譲を収入とする特別会計「臨海地域開発事業会計」から出す。都民の税金を収入とする一般会計とは別の財布だ。
着手から40年の臨海部開発は紆余曲折の歴史をたどってきた。
端緒は1985年の「東京テレポート構想」。パラボラアンテナなどを整備する構想だったが、バブル期の地価高騰によるオフィス不足で方針を転換。都は1989年、東京で7番目となる「副都心開発事業化計画」を策定した。
しかし、バブル崩壊で計画の雲行きは怪しくなる。起爆剤のはずだった「世界都市博覧会」は当時の青島幸男知事が中止。フジテレビなど一部の企業が移転したものの、都は後の計画で開発を縮小。賃貸ビルを運営する都の第三セクターは経営破綻した。
転機は2000年代以降の民間の住宅構想だ。臨海副都心の有明のほか、隣接する晴海や豊洲でタワーマンションの開発が加速。臨海部では2010年代以降は就業人口が頭打ちとなる反面、居住人口の伸びが目立つ。
オフィスではなくタワマンブームがけん引して開発は進んだ。
人口増は交通インフラの整備にも追い風となった。都は2040年までに東京駅を起点に築地や豊洲、有明を結ぶ「臨海地下鉄」の整備をめざす。新交通システム「ゆりかもめ」やバス高速輸送システムに頼ってきた交通の「背骨」となる。(日経MJ)