近年、建築用途毎でユニークかつ多様な建築が増加している中で、建築士が建築に込める設計コンセプトや、空間のあり方について訪問ヒアリングし、特に印象に残ったお話をお伝えしたいと思います。
多様なカルチャーが集まる渋谷での設計コンセプト

建築物は、施主や設計士の片面的な嗜好で出来上がる訳ではありません。設計士は建築物が建つ土地や、あるべき街の姿を思い描いて、設計図面に落とし込んでいくと、多くの設計士の方から伺いました。
例えば、渋谷で複合ビルの設計を担当された設計士から伺った話では、「渋谷という街は特に様々なカルチャーが入り乱れていて、昔は『若者だけの街』と言われた街でしたが、最近はアクティブシニアの増加から、年齢層の幅も広がって来ている。そのような場所に建つ建築物は、多様な人に受け入れてもらえるような建築であるべきだし、建築の外側からも『人の活気』が伝わってくるような建築にしたい」との事でした。まさにその通りだと思いますし、その設計士は対象建築では開口部を多くして、擦りガラスを多用する事で建築の外側から人の活気や存在感を街へ発信したいと計画されています。
和のテイストが根強く求められる日本橋界隈での設計コンセプト

近年は再開発や高層オフィスビルの建築ラッシュが続く日本橋・神田界隈で、中層オフィスビルの設計を担当されている設計士から聞いたお話です。「日本橋や神田、といった江戸時代から多くの人が集まる街では、日本ならではの『和のテイスト』が求められる傾向が根強い。これだけビルや街並みが洋風化しても、どこかで『江戸の情緒』が感じられるような建築や建築内のアクセントが求められていて、その工夫に苦慮する事もある」との事でした。そのような建築のエントランスでは、切子細工のオブジェを配置したり、照明の照度を落として、心が休まる空間作りを心掛けているそうです。オフィステナント内は実用的な照明照度やオフィス家具が採用される傾向が強いので、共用部だけでも心が和らぐように設計したいと話されていました。因みに、エレベーター内の照明も照度を落とすのがトレンド化しているそうです。
街の成り立ちも設計コンセプトに落とし込む

東京の小平市で再開発が計画されており、基本設計を担当されている設計士から聞いたお話です。「昔の小平市は、独自の水路がなく、街としての発展が遅れていた。そこで玉川上水から水を引き、水路を確保した事で工業化も進み、今の発展がある。そのような経緯から、再開発の設計コンセプトを『水のイメージ』にした。水を連想させる青色の建材や、透明感のある材料は有望」との事でした。 設計士から建築コンセプトについてお話を伺う事で、単に建築物を機能だけで考える事なく、街づくりのパーツとしてデザインする事が重要だと改めて考えさせられました。
【担当:相馬 義輝】