建設業界のDXを牽引する「i-Construction」。
2025年度上期の最新データから、現場の「当たり前」が次のステージへと進化している実態が明らかになりました。
2016年度に国土交通省が提唱した「i-Construction(アイ・コンストラクション)」(ICT活用工事)は、来年度でいよいよ10年という大きな節目を迎えます。当初の「実験的な取り組み」というフェーズは完全に過去のものとなり、今やICT活用は土木工事の標準仕様(スタンダード)へと定着しました。
今回は弊社の全国土木工事情報『D-NET』の2025年度上期(4月~9月)に公告された国直轄工事データの集計に基づき、最新のICT工事件数と業界の展望を解説し、数字から見える建設業界の今をレポートします。
当記事の元になっている「i-Construction最新動向レポート2025年度上期版」は2024年度までの開札情報から抽出した落札額や、盛土土量、掘削土量の変化などの推移まで掲載しております。
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抽出・分析のための条件
前提としてどのようなデータから集計されたか整理して参ります。
弊社全国土木工事情報D-NETより以下のデータを抽出・分析しています。
国の直轄工事(各地方整備局・北海道開発局・沖縄総合事務局・国土技術政策総合研究所)
2025年度上期(2025年4月1日~2025年9月30日)の間に公告された時点での土木工事・ICT工事、一部開札情報。(公告情報が出されない随意契約・指名競争入札など)
※対象の工事種別は「一般土木」「アスファルト舗装」「浚渫」「法面処理」「港湾土木」「維持修繕(ICT工事のみ)」となります。
※入札方式が指名競争入札、工事希望型入札などの一部工事は、開札情報を用いております。
※データは2025年9月末時点の集計データを使用しております。
※以後の公告の修正や指名競争入札などの公告情報の開示、もしくは取得が難しい開札情報の取得により、件数・数値の補正による変動がある場合がございます。今後の発表資料との差異も考えられますので、予めご了承の上データをご覧ください。
※今回のレポート作成にあたり一部データも再集計を行っております。弊社発行済みのレポート掲載の数値から補正され、増減がある場合がございます。
工事件数全体は「微減」。能登半島地震後の反動も影響か
2025年度上期に公告された、国直轄の土木工事の総数は2,091件となりました 。
前年度比: 2024年度上期の2,158件からわずかに減少 。

推移の背景: 過去5年間の推移を見ると、2,000〜2,100件台で安定した傾向にあります 。
2024年度に一時的な増加が見られたのは、同年1月に発生した「令和6年能登半島地震」への対応工事が影響しており、2025年度はその発注が一段落した「落ち着き」の時期にあると分析されています 。
月別の動向では、6月こそ前年を上回る531件を記録したものの、第2四半期(7月~9月)は過去5年間で最低水準となる月が目立ち、全体として慎重な発注ペースとなりました 。
驚異の「ICT活用率88.4%」。もはやICT抜きでは語れない
全体の件数が微減する一方で、際立っているのがICT活用工事の「密度」です。

※2016年度、2017年度は国土交通省発表の数値
※当該のICT工事は、ICT土工やICT舗装工などとBIM/CIM工事を合わせた広義のi-Constructionの対象工事としている。
ICT工事件数: 1,849件(前年同期とほぼ同水準を維持)
ICT活用率: 88.4%(前年同期の86.0%からさらに上昇)
2021年度上期の活用率が67.7%だったことを考えると、わずか4年で20ポイント以上も増加したことになります 。全体の工事件数が減る中でICT工事の件数が維持されている事実は、適用可能な工種において「ICT活用が原則」として完全に組み込まれていることを示しています 。
もはや「ICTを導入するかどうか」を検討する段階ではなく、「全工事の約9割がICT対象」という前提で、いかに効率的に対応するかが問われる時代に突入しています 。
次なるステージ「i-Construction 2.0」と「天井」の足音
一方で、データは一つの「転換点」も示唆しています。
ICT活用率は前年同期(86.0%)から微増したものの、その伸び幅は緩やかになっています。
これは、ICTを適用可能な工種の拡大が一通り完了し、普及のスピードが「高止まり」の局面に入ったことを意味しています。
これまでは「いかにICT工事の件数を増やすか」というフェーズでしたが、今後は「導入した技術をいかに使いこなし、生産性を高めるか」という、活用の質が問われるステージへと移行したと言えるでしょう。
ここで重要になるのが、現在進行中の「i-Construction 2.0」へのシフトです 。
単なる「点」の活用から「面」の連携へ: 従来の3次元測量やICT建機の活用といった単体技術の導入から、AI、IoT、クラウド、BIM/CIMを高度に連携させた「デジタルツイン」の実現へと発展しています 。
目標はスマートインフラ: 現場と発注者がリアルタイムでデータ共有し、意思決定を加速させるDX化が次の10年の主戦場となります 。
まとめ:データに基づく「先読み」が勝敗を分ける
2025年度の通期予測では、例年通り工事件数は5,300件前後で着地する見込みです 。
ICT工事が「当たり前」になり、技術的な差別化が難しくなる中で、企業の競争力を左右するのは「いかに早く、正確に案件情報を掴むか」という情報戦略です。
今回の集計に使用した『全国土木工事情報D-NET』のようなサービスを活用し、入札・開札情報をデータとして分析することは、建設業界の営業・マーケティング戦略において欠かせない要素となるでしょう。
10年目の節目を前に、成熟期を迎えたi-Construction市場において、入札・開札データを多角的に分析し、次なる一手(2.0への対応)を打てるかどうかが、企業の成長を左右する鍵となります。
(担当:片岡 優介)
当記事の元になっている「i-Construction最新動向レポート2025年度上期版」は2024年度までの開札情報から抽出した落札額や、盛土土量、掘削土量の変化などの推移まで掲載しております。
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参照データ:
ベーシック インフォメーションセンター株式会社「i-Construction最新動向 2025年度上期版」全国土木工事情報D-NET 集計データ
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