平成3年度(1991年度)で行った調査の中から、ユニークな調査を紹介したい。それは「遺体ホテルの今後の市場性」に関する調査である。人間は誰しも、遅かれ早かれ、いつかは最期の時を迎える。日本は高齢社会にあるが、次にやってくるのが「多死社会」ということになる。2019年の年間死亡者数は138万人で戦後最多を更新した(厚生労働省)。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2030年に160万人を突破し、2039年、2040年両年の167万人でピークを迎える。
その一方で、「多死社会」への備えはいまだに十分とは言えない。死亡者数の増大で懸念されることといえば、斎場や火葬場の不足だが、とりわけ逼迫しそうな地域が、高齢化が急速に進むとみられる東京圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)である。実は遺体を火葬するまでに、場所や時期、時間帯によっては1週間や10日間程度待たされるケースも生じている。斎場や火葬場の空きを待つ時間が長くなれば、その間、霊安室を利用せざる得ないが、霊安室がいっぱいの場合は、火葬の日まで遺体を預かる「遺体ホテル」と呼ばれるサービスを利用することになる。
「遺体ホテル」とは、遺体を待機させておく場所であり、人が死ねば、火葬までの遺体安置場所は、かつては自宅であったはずだ。だが都会では、居住空間に死を迎え入れることが難しくなってきている。一つは、マンション暮らしの世帯が増えている点だ。特に都会の高層マンションでは、管理組合の規約によって遺体を運び込めないところが多い。病院から自宅に戻したい気持ちが遺族にあっても、人目につきやすい日中にマンションの室内に運び入れることは憚られる。
さらに、昨今の「葬式の簡素化」が、待機遺体の増加に拍車をかけている。東京圏で急増している直葬だ。直葬は葬式をせずに、火葬してしまうことである。直葬の場合、病院などからいきなり火葬場へ直行することは少ない。墓地埋葬法によって、死後24時間以内の火葬が禁止されているからだ。つまり、その間、どこかに遺体を保管しておく必要が生まれる。火葬場の増設が見込めない中で、じわじわと死者数が増え続けている。死者が増える夏場や年の暮れには、火葬待ちが1週間から10日というケースも出てきている。東京圏では火葬能力が死者の数に追いつかない。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、75歳以上の人口は2025年には572万人、2040年には602万人に膨らむ。これだけ死亡者数が激増するのでは、現在の斎場や火葬場だけでは対応できない。ますます遺体ホテルが増加してくると予測できる。すでにラブホテルが遺体ホテルに建替している例もある。遺体ホテルというと殺風景な暗いイメージを連想するが、制服姿のコンシェルジュがいて、ホールの正面にチェックインカウンターがあり、ソファやオブジェが置かれ、内装はまるでホテル。
料金は1日(24時間)あたり9,000円~10,000円である。