設計事務所は、カーペット(絨毯)の種類やデザインの指定はするが、カーペットの基材繊維(糸の種類)までも指定するのか。と、繊維メーカーから質問された。
私の回答は“特殊な空間ならともかく、通常の空間では繊維までの指定はしないと思う”“せいぜい化学繊維か天然繊維か”“リビングルームに使用するのかベッドルームに使用するのか” “耐久性、摩耗性、掃除性、保温性、クッション性、防音性、等はどうなのか“そんな程度で、カーペットは指定されていると回答した。
繊維メーカーの担当者いわく、繊維から指定してもらう事は出来ないものですかね。
繊維メーカーの着眼点は面白い。たしかに、ユニクロはヒートテック素材を開発し、新たな下着革命を起こした。であるなら、カーペットも繊維から指定することは可能かも知れない。しかし、大きな問題がある。それは、繊維メーカーは、繊維をカーペットメーカーへ納め、カーペットメーカーがその繊維を加工デザインし商品化している。従って、設計事務所から見ると、指定するのは、カーペットメーカーの商品(ブランド)であり、繊維メーカーの繊維指定までは行わない。強いて指定するとするならウールかアクリルかナイロンかである。繊維メーカー、例えば、東レ、帝人、日清紡、等各社は同じモノを作っているので、設計事務所から繊維の指定をしてもらうには、特殊な素材を開発しなければ指定までには至らない。となると、カーペットメーカーとコラボするのが一般的で、そうでなければ、自らカーペットを製造するしかない。でも、自らカーペットを製造したらカーペットメーカーと競合することになる。ややこしい。
繊維から指定してもらうにはどうしたら良いか。この調査案件は、大手繊維メーカーからの依頼である。同社は、カーペットメーカー、サンゲツ、東リ、川島織物、等との取引があり、川上から攻めることも出来るが、川上から攻めると加工デザインされて、新素材の優位性が伝わらない。であるなら、川下の設計事務所を対象に新素材をPRし、設計事務所からカーペットメーカーへ逆指定できればと考えた。面白い発想である。新素材の繊維は、抗菌性、断熱性、遮音性に優れている繊維。しかしながら、設計事務所からすれば、カーペットメーカーへ、繊維の指定をしてもカーペットメーカーが、それを受けて独自にカーペットを製造するのは難しい。また、設計事務所はそこまで繊維に拘ってはいない。
この案件を受託する前に、おおよその結果は分かっていたし、大手繊維メーカーにもその旨を伝えたが、実際に設計事務所の声を聞きたいと、大手繊維メーカーの強い要望から、設計事務所調査を開始した。
調査対象は首都圏マンションで、そのマンションの設計を得意とする設計事務所50社のリスティングを行い、その中から約20社のアポイント活動。そして訪問活動を行った。その結果、新素材の満足度や課題、要望を確認することは出来たが、カーペットメーカーへ新素材の指定をするまでには至らなかった。当然な結果であったが、設計事務所の生の意見が聞けたと依頼企業から満足してもらった。

今回の調査で大変だったのは、カーペットの専門用語や基礎知識を学ぶこと。カーペットの織り方やパイルの種類、繊維素材の比較、等。そこから説明しなければ設計事務所に新素材の良さを理解してもらえないからである。大変だったのは、それだけではない。設計事務所に説明する新素材のカタログづくりも弊社で制作することに。正直なところ、依頼メーカーから制作会社に頼んで欲しかったが、その制作会社は建築知識が無いとのことで、弊社が制作することに。弊社が制作すると言ってもカーペットや繊維の知識は乏しい。制作するのに何度クライアントと打ち合わせをしたか。むしろ調査活動よりも、そちらの方が大変だった。そんな調査とカタログ製作の案件でした。