はじめに
大雨のたびに出される避難情報や、川の水位速報。
以前よりも頻繁に確認するようになったと感じる方も多いのではないでしょうか。
降雨量の増加だけで説明できないケースが増えています。
同規模の雨量でも、被害が拡大する河川とそうでない河川があるのが現状です。一見すると川は変わっていないように見えますが、実際には川底に土砂がたまり、流れにくくなる場所も少なくありません。
こうした目に見えにくい河床の上昇や河道断面の変化が、洪水リスクや流下能力に影響を与えています。
気象庁によりますと年間の総雨量は変化傾向はないとのことで、雨量が急激に増えたというわけでありません。
ですが大雨の頻度と強さが増す一方で雨が降らない日も増えており、雨の偏りが強くなっている傾向が日本各地で観測されていると言います。
出所:気象庁 『「日本の気候変動2025 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書— HTML版」 5-1. [観測結果] 日本国内の極端な大雨の発生頻度が増加している』より
今回はこうした背景を踏まえたうえで、河床整理工の役割と必要性について河道掘削工との違いも交えて整理していきます。
河床整理工とは
「河床整理工(かしょうせいりこう)」とは、河川工事の一種で、川底(河床)の形や高さを整えて、水の流れを安定させるための工法・構造物の総称です。
目的河床整理工が行われる主な理由
流れが速すぎて川底が削られる「河床低下」を防ぐ砂や土砂がたまりすぎる「堆積」を防止する流路を安定させ、氾濫を起こしにくくする橋脚・堤防など周辺構造物の基礎を守る魚類が遡上しやすい環境を作ります。(魚道など)
具体例
床止め工→ 川底が削られるのを防ぐための堰状の構造物帯工→ 川底を横断して流れを分散させる
堤水制工→ 流れを誘導し河岸の浸食を防ぐ杭や構造物護床工→ 石やコンクリートで川底を保護
川が勝手に深くえぐれたり、土砂で浅くなったりすると、洪水が起きやすくなる橋や堤防が倒れる危険が増し生態系が乱れます。そのため、川底を適切な高さと形に保ち、「流れをコントロールする工事」=河床整理工と考えると理解しやすくなります。
河道掘削工との違い
河床整理工
<目的>
川底の形状や高さを調整して、流れを安定させたり、浸食や堆積を防ぎます。「川底の環境を整える工事」です。
<特徴>
川底に構造物(床止め、護床工、水制工など)を設置することが多く、土砂を大量に取り除くことが目的ではなく、川の自然な流れをコントロールする、または流路を安定化させるのが主眼になります。
<例>
川底の一部に石を敷いて削れを防ぐ、川幅に合わせて低い堰を作ります。
河道掘削工
<目的>
洪水防止や航行・排水のために、河道(川の流れる部分)を掘って水が流れやすくします。つまり、「川の断面を広げたり深くしたりする工事」です。
<特徴>
大量の土砂を掘り取り、川の断面積を広くする流量を増やしたり、洪水時の水位上昇を抑えたりするのが主眼となります。自然な川底の形状よりも、工学的に安定した断面を作ります。
<例>
川幅を広げるために土砂を掘削、川底を深くすることで洪水時などに安全に流下させます。


出所:国土交通省 東北地方整備局 山形河川国道事務所 メディアライブラリー「吉野川の河道掘削工事」より
https://www.thr.mlit.go.jp/yamagata/medialibrary/library/river/yoshinogawa/catalog/01/index.html
まとめ
河床整理工と河道掘削はいずれも、河川の安全性を維持するうえで欠かせないインフラ整備ですが、その役割やアプローチは異なります。
重要なのは、どちらが優れているかを単純に比較することではなく、河川の状態や流域特性に応じ適切に使い分け、あるいは組み合わせていく視点を持つことです。
気候変動や土地利用の変化により、河川を取り巻く環境は年々複雑さを増しています。
こうした状況の中で、目に見えにくい河床や河道の状態を継続的に管理していくことは、リスクマネジメントの観点からも非常に重要な取り組みと言えます。
河川整備は一過性の対策ではなく、長期的な視点に立った「維持」と「更新」が求められる分野です。
2025年6月に発表され、国土強靱化対策の一環として推進されている「第1次国土強靱化実施中期計画」においても治水対策は重要な要素の一つとなっています。
今回ご紹介した二つの工事も、治水対策の基盤を支える有効な選択肢の一つとして、今後さらに重要性が高まっていくと考えられます。
(担当:片岡 優介)
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