あれはせつない真夏の思い出。真夏の思い出と言えば、湘南のひと夏の淡い恋の思い出・・・と言いたいところだが、そんな楽しい話ではありません。その真夏の思い出とは、福岡県宗像市の車整備会社へ調査に出向いた時の話です。調査の依頼先は、大手自動車メーカー。調査目的は、整備会社の車の販売や紹介状況、及び自動車メーカーに対する評価を確認する全国調査。私は、福岡県担当でした。この調査の特徴は、調査対象先が指定されているので、取材拒否が許されない。他の整備会社に変更する事も出来ない。そんな難易度の高い調査でした。
最寄駅は確か、博多からJR鹿児島本線で、約30分の赤間駅。そこからバスに揺られて約20分の場所に、その指定された整備会社が。その整備会社は、国道に面しており、敷地は広く約200坪はあったかと思う。敷地の右手が整備工場、左手に整備済みやこれから整備する車が数台。奥の突き当たりは和風づくりの住宅兼事務所。約30数年前に経験した調査だが、はっきりと覚えている。それは、私にとって調査の基本を学んだ仕事だからである。
この調査手法は、オープン面接調査(依頼先を明かす調査)。事前に電話で調査目的を説明しアポイントをとるのが効果的な調査方法だが、対象先が指定されているので、万が一、電話先で訪問拒否さらたら調査する事が出来ない。そんな考えから、その日に、責任者が会社にいるのを確認し、アポなしで現地へ向かった。ここが●●整備会社か。気持ちを引き締めて整備会社の敷地内に。奥の住宅兼事務所に向う途中、車の下にもぐって車を整備している人がいたので“責任者の方は、事務所にいますか”と尋ねたら、その人は、車の下にもぐったまま、何の用事かと突っ慳貪(つっけんどん)に聞き返してきた。
無愛想な人だなと思ったら、なんとその人が整備士で責任者で代表。足しか見えない代表に、戸惑いながらも調査依頼先と調査目的を説明。 「忙しい!」「なんで俺が答える必要があるんだ!」「他の会社に行けよ!」と想定通りの即答。しかし、指定されている調査なので、その場を立ち去る事は出来ない。どうしたら良いのか分からず、炎天下のその場に立つこと約30分。往来する車の音と蝉の声が暑苦しく聞こえていた。
すると、住宅兼事務所から、「この暑い中で、何時まで人を立たせてるの!!」と女性の大きな声。それは代表の奥さんの声で、それを聞いた代表は、ようやく車の下から現れた。奥さんの助けがあって、ようやく涼しい事務所へ。奥さんは、謝りながらアイスクリームを差し出してくれた。東京から来た事を言うと、娘さんが東京に嫁いでいる話を聞かせてくれたり、東京で話題になっている場所を質問してきたり。嬉しかった。勿論、調査も上手く行ったし、帰りは代表が赤間駅まで送ってくれた。この調査で学んだ事は「調査は人である事」「調査は諦めない事」であり、その学びが、弊社の礎になっている(つづく)。