
“社長、石油タンクローリーが来ましたよ!” 『やっぱり会社名が書いてないな?・・・
それじゃ気付かれないように尾行しよう』 “了解です”。私とスタッフの会話のやりとりから石油タンクローリーの尾行劇が始まった。時計は確か21時を少し過ぎていた。タンクローリーが給油に来るガソリンスタンドを事前に調べ、そのガソリンスタンド近くに待機し、タンクローリーが現れたら尾行する。車の中は私とスタッフの二人。スタッフは運転。私は、タンクローリーの移動経路と給油したガソリンスタンドをノートに記載する(当時はナビがなかった)。タンクローリーは、茨城県から千葉県へ、まるで刑事物語の様な尾行調査が始まった。
尾行調査を開始し、順調に尾行していたつもりだったが、開始して約2時間が過ぎた頃、タンクローリーが片側2車線の国道路肩に、ゆっくりと止まった。時間的に往来する車は少ない。尾行が分かったのか、心臓がばくばくである。運転手がタンクローリーから降りて、私達の車に向って歩いて来た。
『やっぱりばれたか?!』。運転手が、サイドガラスを軽くノックしたので、恐る恐る開けると、“尾行してるよね。これ以上尾行したら、危ない事になるからやめた方がいいよ!”と言って、タンクローリーに戻って行った。尾行に慣れているのか、尾行が下手なのか(興信所ではないので下手でも良いが)、どちらにしろ、素直に尾行を中止した。二度としたくない怖い調査でした。
この調査は、石油元売り会社の社長直々の依頼で、日頃お世話になっていた事もあり、可能な範囲の条件付きで引き受けた案件である。依頼の目的は、粗悪なガソリンを安価で販売しているガソリンスタンドのスタンド名(数店舗あり)と石油元売り会社の会社名が同じ。同じ名称で、粗悪なガソリンを販売されては、石油元売り会社の信用に傷がつくので、そのガソリンスタンドの実態とそのスタンドに卸している石油元売り会社を調べてくれないかとの依頼であった。実際に消費者からクレームもあるらしい。弊社がする調査でないのは分かっていたが、若かったのだと思う。好奇心で引き受けてしまった。
まず、ガソリンスタンドの実態を調べる事にした。石油元売り会社から指定されたガソリンスタンドに向いガソリンを給油し、店員のサービス対応を確認した。大手ガソリンスタンドと比べれば、確かにガソリンの価格は安い。店員は若く制服がない。店舗内とトイレは汚い。スタンドの敷地には店員のものと思われる改造バイクが数台置いてある。どう考えても普通のガソリンスタンドとは違う。近くのコンビニで、そのスタンドの評価を聞くと、何と驚いた事実が。そのスタンドでは、何回か強盗事件が発生したり、そこで給油すると車が故障する等の話しを聞いた。これでは、同じ企業名の石油元売り会社においては、たまったものではない。
この様な、調査をミステリーショッパー(覆面調査)と言う。飲食店舗やショールームへお客さんの立場で訪れ、店員のサービスを評価する調査である。この調査に於いては、弊社の調査範囲であり、特に違和感はなかったが、タンクローリーを尾行するのは、やはり無理でした。後日、石油元売り会社の社長に報告を行い、お疲れ様と言って、それなりの評価をして頂いたが、二度としたくない調査でした。因みに、そのガソリンスタンドは、今はありません。