先月号は、フィルムメーカー依頼の鈴木エドワード氏を招いた講演会について紹介。
今月7月号は、私の地味で寂しい、でも、ほのぼのとした講演会のお話です。講師は私。依頼先は、『公益財団法人山形県企業振興公社』。同公社は、地元企業の新分野進出や事業拡大、経営改善、技術的な課題解決、等地域企業の経営支援を行う機関です。同公社の専門家登録をしている関係から講演依頼が。
講演会の依頼テーマは、『これからの新築住宅動向と空き家対策』。聴講者は、地元の工務店や資材メーカー。講演時間は1時間30分。
この講演テーマを聞けば、それなりの講演会と思われますが、実際には、今も忘れられない開けてビックリな講演会でした。まず、そのビックリとは。講演会場は、山形県北山形駅からローカル線に乗りかえて4つか5つ目の駅で下車。確か無人駅です。周り一帯は田園風景。えっ!こんな場所で講演会。会場はどこ?地図を見ながら線路沿いに数分歩いたら。見えてきました。畑の真ん中に講演会場らしい建物が。古びた木造平屋20坪程の集会場らしい建物。ここで講演会?周りに何も無いんですけど。これが一度目のビックリ。
二度目のビックリは、講演会場らしくない集会場。建物の引き戸玄関を恐る恐る開けると、建物の中は雑然としており、床は所々傷んだ木質床材。天井は雨がシミになったと思える天井材。正面には大きな黒板。真ん中にだるまストーブ。そのストーブを囲むように20脚程の折りたたみパイプ椅子。どう見ても講演会らしい雰囲気無し。引き戸玄関を開ける音に気づいた担当者が、スリッパの音をたてながら、私の方へ。「お待ちしていました。伊藤先生ですか。こちらへ」と、黒板前に置かれたパイプ机とパイプ椅子に私を案内。「遠いところ、こんな田舎町まで来ていただきありがとうございます」と言って名刺交換。そして、会場で合流するはずだった『公益財団法人山形県企業振興公社』の担当者が急用で来られないとのこと。どうなってるの。本当に講演会をするの。聴講者が本当に来るの。そんな気持ちを抱きながら講演会の準備に取り掛かる。
ここで、三度目のビックリ。パラパラと聴講者が集まり出し、確か事前確認では20数名と聞いていたが、最終的にその数10数名。そのほとんどが高齢者や高齢者夫婦。工務店や資材メーカーと言っても兼業農家の聴講者。
田舎町だから聴講者の多くは知り合い。今まで経験したことのない地味な雰囲気の中、講演会の開催。気持ちはスローダウン。事前準備してきた講演内容の話が伝わらない。マーケティング用語も伝わらない。聴講者は、何を話してるのって顔をして私を見ている。講演内容が悪いのか、聴講者のレベルが低いのか。内心あせりまくりでした。このまま講演会を続けても、しらけるばかりと思い、講演会内容を20分程度で終え、自由討議に切り替えた。

「皆さん、難しい話は終えて、皆さんが日頃悩んでいることを議論しませんか」と話を切り替えたら、議論というよりも相談事が。「このまま工務店を続けて行っても良いのか」「建築資材を売るにはどうしたら良いか」「設計価格の設定が分からない」、等の実務的な話から、「東京に行った子供に帰って来てもらうには」「2世帯住宅にした時のトラブル」「作っている野菜を東京で売れないか」、等私的な話まで、講演会のテーマとは、かけ離れた話で盛り上がった。まるで渥美清が演じているフーテンの寅のような座談会。当初の講演会から外れましたが、和気藹々なほのぼのとした講演会でした。良い経験をさせて頂きました。