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工業扇の市場

2024年も早いもので、あっという間に2月も終盤となりました。最近、私は街中を歩いていて内装工事の現場をよく見かけるのですが、建築内で稼働する大型の扇風機が目に入ります。それは、扇風機の一般的な用途とも言える暑さ対策ではなく、建築内の換気(特に有機溶剤の揮発成分の放散)が主目的のようです。もちろん、内装仕上材や木材の乾燥や接着剤の固着を促す効果もあるかと思います。今回は建築現場で使用される「工業扇」の市場について説明したいと思います。

工業扇の種類/分類

工業扇と言っても、あまり一般的な商品ではないかも知れません。しかし、工業扇には様々な種類があります。主流は三脚で地面に直接設置するタイプで、作業現場から移設する際は三脚をコンパクトに折りたたむ事が出来るので重宝されています。ハイエース等のワンボックスカーに積載する際にも便利で、過半数がこのタイプとなります。また、壁掛式や床置式といった送風部分を担持するパーツの形状によって様々なバリエーションがあります。扇風機の羽根部分の材質も大きく2分されます。主流はPP樹脂のタイプで、軽量かつ一定の耐久性もあり、最も多く市場に流通しています。他方で、羽根部分にアルミニウムを採用する商品もあり、近年は売上を伸ばしています。PP樹脂と比較して高価になりがちですが、耐薬品性が高く、工場等で空気中に薬品や油分を多く含む雰囲気中でも耐久性の高い工業扇として位置付けられます。アルミニウムは、その表面に酸化防止膜を生成する特性があり、PP樹脂よりも耐久性や強度の高さが求められる現場で多く使用されています。羽根のサイズは45cmが売れ筋ですが、中には50cmやそれよりも大きいサイズも存在します。70cm以上になると、風洞扇とも呼ばれるような大きな送風機になり、体育館を始めとする大型施設の換気や、干物の生産等にも使用されます。工業扇は、一般的に家庭用の扇風機よりも風量が高く、タイマーといった機能性よりも風量が重視されます。中には首振り機能を備えるものもあります。また、工業扇の駆動にはモーターが使用されますが、モーター部分が外気に直接晒されているタイプを開放式と呼び、モーター部分を樹脂パーツ等で全て囲うタイプを全閉式と呼びます。モーター部分が外気に晒されると、埃やチリがモーターのパーツにくっついてしまい、清掃の手間や製品寿命を短くする原因ともなります。全閉式はモーターのパーツを汚れから守り、安定して長期間使用出来るように工夫されていますが、その分、コスト高になります。近年の工業扇にはサーマルプロテクターと言われる、長時間の稼働による過熱故障を抑止する機能が付加されています。建築現場の作業は1日中行われるケースも珍しくなく、特に夏季は工業扇のモーター部分の過熱負荷が高い事から、このような機能が必要となります。

電源仕様も多様化している

工業扇の電源仕様は一般的には単相100Vですが、一部で工場や倉庫の使用を前提とする商品もあり、三相200Vの商品も存在します。三相電源は動力電源とも呼ばれ、一般家庭よりも多くの電気コストが生じる産業施設では、基本コストこそ高いものの、従量制よりも安価に電力を使用出来ます。
近年はネット通販の拡大によって物流倉庫の建築が拡大していますが、それら建築内で就労する従業員の快適性や熱中症対策の目的もあり、工業扇の採用が一般化しています。特にコロナ禍では換気促進の目的も加わり、その需要は一層に拡大しました。倉庫に工業扇を設置する場合は、場所を取らない壁掛式が主流となっています。

工業扇の市場規模は拡大中

工業扇は、原理が簡素な為、比較的に参入が容易な市場です。一部を除き、殆どが中国や台湾のOEMメーカーで生産した商品を国内メーカーが輸入・販売している状況です。市場規模は2018年時点で65万台程度でしたが、2023年時点で80万台程度まで拡大していると見られます。各メーカー共に販売が好調であり、ホームセンター等でも販売される商品であることから、アウトドア用途でのニーズも市場拡大に寄与しています。建築現場のみならず、家庭で使用するユーザーも拡大中です。

【担当:相馬 義輝】

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