調査物語

再び注目されるコンバージョン

今、「コンバージョン」が再び注目されている。
既存建築物の用途転換であるコンバージョンが注目されたのが、今から約30年前。バブル崩壊後の経済停滞が続く中、主に不良債権の担保不動産である中小ビルの価値を高める狙いから、または少子化で廃校になった学校の再活用から、用途転換を図るといった試みが行われるようになった。
時代は変わったものの、中小ビルの価値を高めるコンバージョンの狙いは今でも変わりはない。遊休化・老朽化した建築物にとって、テナントの確保は容易ではない。ただ、オフィスでの用途なら確保は難しくても、オフィス以外の用途なら需要が見込めることもある。

さらに言えば、今はビル用途に対する需要構造が、以前とは異なる。例えばインバウンドの増加を背景に、ホテル需要が見込めるようになってきた。弊社近くのオフィスビルもホテルに用途転換を行った。集合住宅、シェアハウスやシェアオフィスのような新しい事業モデルも登場している。転換先の用途のバリエーションは、コンバージョンの黎明期に比べれば、はるかに豊かになっている。廃校や工場・倉庫もレストランに転換したりホテルに転換したりその用途は多岐に渡る。

例として、オフィスからホテルに用途転換した「ファーストキャビンホテル」について説明する。
一般的に普及している「ファーストキャビンホテル」はオフィスからの用途転換が多い。キャビン1つ当たりの売上げは、年間200万円。1坪当たりの売上は、立地によっては賃貸オフィスの2倍を確保できるという。それでいて、投資額は新築に比べて少なく、事業リスクを抑えられる。事業性を確保するポイントは、フロア内に収益源のキャビン数を一定数以上配置することである。

有効な床面積を増やせば、それに合わせてキャビンも比較的自由に増やせる。その理由は旅館業法上このキャビンがホテルの「客室」として扱われないからである。旅館業法上、「客室」には採光上有効な大きさの開口部が必要になる。そのため、既存ビルをホテルにコンバージョンする場合には、客室ごとに窓を確保しなければならない。もしキャビンが「客室」としてあつかわれると、窓位置との関係で、その配置にはおのずと制約が生じる。これに対して、キャビンの旅館業法上の扱いは「寝所」。就寝するための空間である。これならワンフロアに一つの窓があれば済むため、より多くのビルでコンバージョンが可能になる。面白い展開である。

次いでは、若者に人気のあるシェアハウス。オフィスからシェアハウスに用途転換した事例を説明する。
オフィスからシェアハウスの転換は、集合住宅と比べて相性がいい。その1つは、水回り設備の確保が容易という点である。オフィスビルには通常、トイレや給湯室くらいしか給排水の配管が通っていない。それを集合住宅に改修するには、配管を分岐させ、各住戸に水回り設備を配置する必要がある。一方で、配管には排水の流れを考え、一定の勾配を確保しなければならない。住戸によってはこの勾配を確保するために床の高さを上げざるを得ないことから、段差が生じてしまう。ところがシェアハウスなら、水回り設備は共用のため各フロアで1ヵ所に集約でき、段差の問題は生じない。
これからは、建築物を壊すことなく環境に優しいコンバージョンが増えてくるだろう。

 

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