狭小・23区内快適ぎゅう詰め

2人の子どもを持つ4人家族で研究職の40代男性は、杉並区の賃貸マンションから同じエリアの狭小戸建てに引っ越した。「予算的にも同じエリアで買える物件は狭小戸建てだった。」と話す。賃貸で暮らしていたエリアと同じエリアで住宅を探す子育て層は多い。共働き世帯が増え、職場から近い都内での暮らしが最低条件になっている。男性は「子供の保育園を変えたくなかった。」と、同じエリアでの購入を絶対条件にしていた。
立地としては駅から徒歩10分以内の物件を探していたが、予算内の物件が見つからなかった。「駅からは多少歩くが、小学校まで徒歩5分で大きな公園も近くにある。子育てにはベストな環境だと思った。」と子育て環境の良さを決め手に挙げた。

東京カンテイ(東京・品川)によると、2024年に都内23区で新たに分譲された、土地面積30~50㎡の狭小戸建ては1107戸だった。前年から10%減らしたが、統計を開始した2015年からは31%増で、中期的に増加傾向にある。狭小戸建が好調な要因は、居住面積でマンションに近づいている上、価格面では割安感が増しているためだ。

不動産経済研究所(東京・新宿)によると、2024年の首都圏マンションの平均専有面積は66.42㎡で、10年前より7%縮小した。土地面積50㎡の狭小戸建の場合、建ぺい率や容積率によっても異なるが、一般的に70~80㎡程度の床面積が取れるとされ、居住空間確保では同程度のマンションと遜色がない。
一方、不動産情報サイト「ライフルホームズ」を手掛けるLIFULLによると、2024年の東京23区の新築狭小戸建て(土地面積50㎡未満)の平均価格は5114万円(19年比17%増)。不動産経済研究所によると、2024年の東京23区の新築分譲マンション平均価格は1億1181万円(同53%増)で、両者には2倍以上の開きがある。

狭小戸建の供給が多いのは大田区、足立区などの周縁部だ(東京カンテイ調べ)。同じ周縁でも東側が多い「東高西低」型となっている。ハウスメーカーは地価の安い東周縁部に注力する事で価格を抑え、供給量を増やしている。供給量で最も多いのは大田区。都心からのアクセスの良さに加え、荒川区のような小規模住宅に対する規制を設けていない事が要因だ。

「新築で家を探していたが、マンションよりも全然安かった。」東急東横線の多摩川駅の徒歩圏内で狭小の戸建て住宅を約6000万円で買ったIT企業勤務の30代男性はこう話す。妻は専業主婦のため、1人でローンを組む必要があり、予算の上限も限られていた。

マンションから戸建てに切り替えたことで都内での住宅購入が可能になった。「1人のローンで買えるし、都心や空港からのアクセスがよい」。田園調布のアドレスで住環境も良好、「おおむね満足している」という。
狭小戸建が増えている背景には、土地の供給側の事情もある。高齢化により土地や家、廃業した町工場跡地の相続が増加する一方、多額の相続税を負担できすに売りに出されるケースも多い。(日経MJ)

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